月刊アフタヌーンで連載されていた漫画版「秒速5センチメートル」、3/25発売の5月号で最終話となりました。東北関東大震災の影響で札幌に本が届くのが1日遅れになってしまいましたが、今日(3/26)無事に読み終わることができました。思えば今年の正月休み(2011年新春)にYouTubeでたまたまこの作品に出会って以来、映画版、小説版、漫画版と追いかけ続けてきました。映画の公開が2007ねんということを考えればずいぶん周回遅れなのですが、私の3ヶ月にわたる「秒速5センチメートル」をめぐる旅は非常に密度の濃いものでした。
実は漫画版の第6話、第7話を読んでいないので、そこは4/22発売予定の単行本で補完しようかと。単行本を手にいれれば、本当に本当にこの旅が終わるのですね。少々寂しい気がしています。
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さて、いつもどおりガジェット分析行きましょうか。盛大にネタばれするので、ネタバレ上等という方のみ続きをお読みください。
<ネタバレ阻止用に少々雑談>
3月はこのアフタヌーンと、3/24のXperia arcの発売を心の励みに日常を過ごしてきました。両方とも達成されてしまった今、次の目標は4/22の単行本と、携帯電話各社の夏モデルです。特にdocomoから発売が見込まれているGALAXY S2は多少高くても手に入れてしまおうと思っています。またSoftBankのメイン回線の端末がそろそろ替えどきです(931SHなのでスペック的には十分なのですが)。iPhone 5にするかAndroidにするか、なかなか悩みどころです。結局のところ私は、将来の発売日を心の糧にして生きるタイプの人間なのでしょうね。
</ネタバレ阻止用に少々雑談>
ではよろしいでしょうか。以下は大いにネタバレです。
最終話は高校時代に種子島で貴樹と過ごし、貴樹のことを一途に想っていた少女、花苗の、それから10年後の様子を描写しています。この描写は映画版にも小説版にもなく、完全に漫画版のオリジナルです。貴樹が13歳の時の明里に対する想いに縛られていたように、花苗もまた、心の深層で高校時代の貴樹への想いに縛られていました。その想いを精算するため、貴樹を探して東京に来た花苗が感じたことは…。そして奇跡が…。という内容です。
さてこの前提でガジェット分析行きましょう。舞台は高校時代(映画で言うと第2話「コスモナウト」)の10年後(と花苗が発言しています)。高校時代は1999年であることが分かっていますので、最終話の舞台は2009年ということになりますね。
最終話では花苗が携帯電話で会話する場面が何度か描かれています。折りたたみ端末で背面にオフセットされたサブ画面が特徴的に描かれているので、すぐに見つかるかと思ったのですが意外と苦戦。最初はP-10Aかと思ったのですが、サブ画面のオフセットが左右逆なんですよね。この漫画の過去の例からいって、実在しない携帯電話を描くことはありえないと思ったので必死に探して、そして見つけましたよ。
花苗が最終話で使っていたのはauの京セラ製端末「W65K」です。
サブ画面の形状や、開いたときにキーボードの枠が黒いことを考慮すると、色はリュクスシルバー(写真左から1番目と4番目)と思われます。ただし背面の特徴あるテクスチャーは書くのが大変だったのか漫画では省略されていますね。この端末、防水というところが花苗のサーファーという設定とよく合っています。
最終話で花苗にちょっかいをかける(?)サーファーの亮が使っているのは、「G’z One」として有名なauのカシオ製端末「W62CA」ですね。こちらも男性サーファーが使う携帯電話としてもうベタベタのチョイスです。
ちなみにW62CAには全く形状が同じ後継機種CA002が存在します。発売日が2009/5/19なので、W62CAでもCA002でもつじつまが合う感じです。
さらに花苗の高校時代の同級生で、最終話の時点ではテレビの制作会社で働くサキはiPhone 3G(黒)を使っています。テレビとかメディアの関係者が新しいものに敏感なイメージをよく表していますね。iPhone 3Gと後継機3GSは形状が全く一緒なので外見の区別がつかない上、発売時期的にもどちらでも整合します(iPhone 3G: 2008/7/11発売、iPhone 3GS: 2009/6/19発売)。その他携帯電話で言うと、花苗の姉が使っている場面がありますが、さすがに小さすぎて判別不能です。
さらに電話関係で言うと、劇中に登場する貴樹の実家(長野)の電話番号、市外局番の「0267」は総務省の市外局番一覧によると
・長野県小諸市、北佐久郡(立科町を除く。)
・長野県佐久市、北佐久郡立科町、南佐久
ということでたしかに長野ですね。
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最後にガジェット的な観点からこの漫画の感想を。この漫画の作者である清家雪子先生は最終話の「作者近況」において、
力不足を痛感しながらも、とにかく原作を大事に、の一念でした。
と語っていますが、ガジェットの選び方や描写の仕方を見るにつけ、本当に細かいところに気を使っているんだなと感じました。この作品の原作者である新海誠氏の作品は、画面の隅々まで神経を使った細かい描写に定評がありますが、そのマインドを十分に理解して漫画化に望んだのでしょう。特に携帯電話については、だれか知り合いにケータイマニアがいるんじゃないかと思わせるほどの絶妙なチョイスでした。W65Kはさすがに意表を突かれましたよ。
最後に素晴らしい作品を届けてくださった作者様や関係者の皆様に感謝の意を表して、この記事の締めとしたいと思います。ありがとうございました。単行本楽しみにしています。