MMSでiモードメールのサービスを実現できるか仕様を読みながら勉強してみた


知り合いにそそのかされてw、MMS(Multimedia Messaging Service、ケータイメールの国際規格、国内ではSoftBankとEMOBILEが採用)の規格を勉強してみました。

リファレンスにするのはMMSの規格を作っているOMA(Open Mobile Alliance)のこちらのページ。

Multimedia Messaging Service V1.2 (OMA)

MMS規格の最新版はv1.3らしいですが、こちらは日付が2011/09/13と新しすぎるので、現状把握のつもりで1つ前のドキュメントをあたってみます。

勉強の観点は「iモードメールのサービスをMMSで実現できるかどうか」。特にiモードメールの最大文字数(5,000文字)添付ファイルを含めたメールサイズ(2MB)およびデコメール(HTMLメール)がMMSの規格内で実現可能かどうかを検討します。SoftBankのS!メールではすべて実現されているのですが、そもそもS!メールがMMSの枠内で実装されているかどうかという話もあるので、規格を読みながら検討します。

MMSのデータ形式~MM Content DomainとMM Content Class

MMSに含めることができるデータ形式やサイズは「MM Content Domain」と「MM Content Class」という概念により厳密に定義されています(「Multimedia Messaging Service Conformance Document」というドキュメントの解説が読みやすいです)。

まず「MM Content Domain」は、MMSのデータ形式やサイズを、サポート範囲別にカテゴリ分類したもので、以下3つが定義されています。

Core MM Content Domain
~一番厳しい仕様。ファイル形式(3GPP/3GPP2準拠)とファイルサイズが規定されている

Standard MM Content Domain
~ファイル形式は3GPP/3GPP2準拠を要求されるが、ファイルサイズの規定がない

Unclassified MM Content Domain
~ファイル形式は3GPP/3GPP2以外(IETFやW3C)の規格も認められ、ファイルサイズの規定もない

Core MM Content Domainに準拠しておけばMMSの相互運用性が保証されるという意味ですね。逆にUnclassified MM Content Domainは「なんでもあり」の様相です。

次に「MM Content Class」は、Core MM Content Domainに含めることのできるデータの形式を規定したもので、以下が定義されています。

Text~文字列、最大30kB

Image Basic~小さな画像、最大30kB

Image Rich~大きな画像、最大100kB

Video Basic~小さな動画、最大100kB

Video Rich~大きな動画、最大300kB

Core MM Content Domainに準拠させるためには、これらのMM Content Classの仕様に沿った形でメッセージを組む必要があります。

MMSメッセージのサイズ上限~一般的には300kBだがそれ以上の場合も

次に、MMSが許容するメッセージのサイズ上限について検討します。注意が必要なのは、MM Content Classが定めているデータサイズ上限は各要素ごとのサイズ上限で、メッセージ全体のサイズ上限ではないということです。「Multimedia Messaging Service Conformance Document」によると、メッセージ全体のサイズを決定する方法(サイズ上限そのものではない)は3GPP(TS23.140)/3GPP2(X.S0016-200)で規定されるとされています。また現実的に端末がサポートするメッセージサイズはUAProf(User Agent Profile)と呼ばれるファイルで公開されることになっています(パラメータ名:「MmsMaxMessageSize」)。UAProfは端末発表前のリーク情報としてしばしばニュースになるので、ケータイマニアの方にはおなじみかもしれません。

UFProfのパラメータについては端末によって(一般にMMSサイズ上限と言われている)300kBを上回る値を確認しています。たとえばXperia arcの国際版(LT15i)のUAProfでは1024000(=1MB)と定義されています。ただし一般的には307200(=300kB)が多いのも事実です。

一方、複数の携帯電話事業者が300kBオーバーのMMSサービスを提供しています。AT&Tは600kBT-Mobileは1MBが上限とのこと。ちなみにSoftBankは300kBオーバーのS!メールを(キャリア内メール定額の対象外になるものの)2MBまでサポートしています。

以上から、MMSメッセージのサイズ上限は端末と携帯電話事業者がサポートする上限の組み合わせによって決定されるというのが実情のようです。一般的には300kB「であることが多い」のでしょうが、端末と携帯電話事業者の組み合わせによってはそれ以上のサイズのメッセージをMMSとして扱えることになります。

Discussion:iモードメールのサービスをMMSで実現できるか?

ではここまでの情報を元に、この記事をまとめる動機である「iモードメールのサービスをMMSで実現できるか?」を議論したいと思います。

【1.最大文字数(5,000文字)】

こちらについては上記MM Content ClassでTextの最大サイズが30kB(=1文字2バイトで計算して約15,000文字)と定義されているので(Core MM Content Domainの範囲で)実現可能です。

【2. メールサイズ(2MB)】

添付ファイルサイズ上限についてはStandard / Unclassified MM Content Domainを用いれば無制限になります。またメッセージ全体のサイズについては端末と携帯電話事業者の組み合わせによって決定されます。以上から諸条件を満たせばメールサイズを2MBにすることも可能と思われます。

【3. デコメール(HTMLメール)】

こちらが一番議論が難しいところです。Unclassified MM Content Domainであればどんなファイル形式でも使えるためHTMLメールが実現できるようにも思われますが、調べた限りMMSでHTMLメールを実現している日本以外の事例を見つけられませんでした。

結局日本の事例から推測するしかないのですが、例えばSoftBankのHTMLメール対応端末からS!メールをiPhoneのMMSあてに送信すると、HTML部分は消失してしまいますが、メールの本文や(HTMLメールに使われていた)画像ファイルはMMSメッセージとして正常に送信されます。このことからMMSと相互運用性を確保した形でHTMLメールを実現することは可能ではないかと推測されます。

まとめ

以上、iモードメールのサービスをMMSで実現できるかについては、最大文字数・添付ファイルを含めたメールサイズ・デコメールに着眼した範囲では「できそう」という状況証拠はそろったのではと思います。ただしメールサイズとデコメールについては、端末・ネットワークの双方の対応が必須となります。そのため仮にiモードメールをMMSでリプレースしたとしても、海外端末の標準MMSアプリで2MBの大容量メールやデコメールが使えるということにはならないでしょう(SoftBankにおけるiPhoneのMMSのような感じになるのでは)。

最後に、個人的にはMMS厨ですが、別にiモード/spモードメールをMMSに移行しなければならないとまでは思っていなくて、単純に技術的興味としてどうなのかなと。ただ昨今のspモードメールトラブルを受けて「独自システムの運用にそんなに苦労するなら、MMS含めて世にすでに存在する他のシステムにしてもいいのでは」と思うのもまた事実。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.