「家電批評」批評 – 2012年6月号のモバイルルーター特集を読んで


家電批評 2012年 06月号 [雑誌] (Amazon.co.jp)

旅行帰りの飛行機で暇つぶしのために購入した「家電批評」。表紙に書いてあったミラーレス一眼特集が目当てだったのですが、ここで言及したいのは後半のモバイルルーター特集。

家電批評といえば「メールアイコンがドロワーに入っていない」という理由でXperia acro IS11Sがワーストバイになるなど、「わかっている人」からの批判が絶えない雑誌ですが、今回改めてじっくり読んでわかったことは、この雑誌はそもそも「わかっている人」を対象としていないこと。ユーザーのスキルを前提としたカスタマイズは評価の対象とせず、あくまで素の商品を素のままで、一般ユーザー観点で評価するスタンスが貫かれています。そう考えれば「(素の状態で)メールアイコンがドロワーに入っていない」というIS11Sの評価理由も分からなくもない感じ(この評価スタンスがスマートフォンに適しているかどうかは別問題ですが)。

モバイルルーター特集でもこの一般ユーザー観点が貫かれています。例えば速度測定ではあくまでも結果の数字のみが記載されており、その時の通信モード(XiかFOMAか、WiMAXか3Gか、DATA MAINかDATA SUBかなど)は記載なし。「わかっている人」は当然知りたい情報ですが、一般ユーザー観点では意味がない(通信モードが何であろうと高速通信できればそれで良い)という姿勢が見受けられます。サイズや重さ、電池持ちなどについて、スペックシートではなく全て実測値で評価している点も好感できます。一般ユーザー観点の評価と前提を置くならば、ネット界隈で言われているほどひどい内容ではないと感じました。

ただし「一般ユーザー観点」だったとしても明らかにツッコミ不足を感じる箇所もいくつかあるのも事実です。

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まず帯域制限についてはEMOBILEが「366MB/日」と書かれており、SoftBankのULTRA SPEEDが制限なしとされていますがこれは明らかに誤りです。EMOBILEの366MB/日を制限とするならば、ULTRA SPEEDの「前々月の月間パケット通信量が3,000万パケット」(=3.6GB/月)も同じように制限と記載すべき。またSoftBank 4G(101SI)は「5GB/月」の制限と案内されていますが、これとは別に「直近3日間 (当日は含まない) のパケット通信量が839万パケット以上」(=1GB/3日)という制限が別に存在します。さらにauのDATA08Wについて「帯域制限もなく3Gエリアの恩恵を享受できる」も誤り(3G利用では通信速度が制限されうる旨auから案内されています)。4G/LTE世代のデータ量制限と、3G時代から存在していた速度制限を同一視してしまっている印象です。

SoftBank機種について対応ネットワークに「SoftBank 3G」と記載されているのも微妙なところ。SoftBankではデータ通信サービスの呼称として「SoftBank 3G」を用いておらず、サービスエリアも(携帯電話・スマートフォン用の)SoftBank 3Gとデータ通信サービスで別に案内されています。SoftBank 3G対応と記載してしまうと、SoftBank携帯電話が使えるところではどこでもデータ通信サービスが使えると誤解されるかもしれません。

些細な点ですが、「Softbank」と「b」が小文字になっている記述がいくつかありました。1箇所なら単なる誤植と解釈できますが複数箇所なので、単に意識されていないだけかと思われます。ソフトバンクでは一貫して「SoftBank」と「B」は大文字記述です。本当に些細な事なのですが、物書きとしてはこういうところにもこだわるべきかと。

「今回検証に使用したのはこの端末」としてGALAXY Nexusが挙げられていますが、速度測定を行ったアプリの種類も明記して欲しいところです。画面写真から「Speedtest.net」が使われていると推測されますが、このアプリは速度測定サーバーの混雑度によって測定値がブレるため、速度測定サーバーがどこだったのかを知りたいところ。一般ユーザー観点では速度測定サーバーを明示する必要はないと判断したとしても、最低限「速度測定サーバーは固定して条件を揃えています」という記載がないと測定値の信用度が下がってしまいます。

最後は個人的な希望で「一般ユーザー観点では必要ない」情報かもしれませんが、やはり速度測定時の通信モードは知りたいところです。これがわかれば記事中でも疑問が提示されている「同じ通信方式でも大差がつく」事象の原因がわかるかもしれません(片方はLTE、もう片方は3Gで接続されていたなど)。また新幹線での速度測定では測定時に車両が動いていたのか駅で停車していたのかも知りたいです。以上の情報がわかれば例えばDATA08Wが全体に速度が出ない中名古屋でだけ速度が上がったのが「駅停車中にWiMAXをつかんだからでは」など、読む側である程度の分析が可能になります。

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ここまで書いておいて何ですが、内容の大枠はそれほど悪いとは感じていません。むしろモバイルルーターの優劣が非常によく分かる良記事と感じました。またモバイルルーターが欲しくなってしまったくらいですw。それだけに細かい点が気になったということでご解釈いただければ。

【余談】巻末袋とじの「今月のガッカリ家電」で、ダメ出ししている評論家諸氏がイニシャルでの記述になっているのが個人的には残念。いろんな仕事のしがらみで名前を出せないんだろうなあと。

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