USB PD(Power Delivery)は、USBケーブルを利用して最大100W(20V/5A)の電力を供給できる規格です。スマートフォンなど、比較的電力の小さい機器への給電に利用されることが多いUSBですが、PDを利用すれば、より電力の大きいノートパソコンなどへも給電でき、スマートフォンの充電時間が短くなることも期待できます。最近ではスマートフォンのほか、AppleのMacBookやMacBook Proなどのノートパソコンにも、PD対応機器が増えてきています。
さて、最近購入したPD対応のモバイルバッテリーやACアダプターを利用して、PD未対応のスマートフォン(HUAWEI P9)を充電すると、なぜか急速充電になりました。PDとは別の急速充電規格であるQualcomm Quick Charge対応機器でもP9が急速充電になり、ちょっとわけがわからなくなったので、自分で調べてみることにしました。
調査に利用する機器はこちら。接続したモバイルバッテリーやACアダプターが対応する急速充電規格を調べることができます。
AVHzY USBテスター 電流電圧テスターチェッカー クイックバッテリー充電器検出器 DC6A26V充電器 容量テスター PPSトリガー 急速充電PD/QCに適応 日本語オペレーティングシステム 日本語説明書付き (Amazon.co.jp)
以下、黙々と結果を掲載していきます。
ケース1:Omarsのモバイルバッテリー
PDはバージョン3.0対応で、5V/2A、9V/2A、12V/1.5Aを通知します。製品スペック上、5Vの場合は3Aのはずなのですが…。PDで18W対応を名乗るには、規格上5V/3Aと9V/2Aへの対応が最低限必要なので、5V/3A非対応の状況は問題があります。PD以外に、Quick Charge 2.0/3.0、Quick Charge同様に電圧を上げるHuaweiの急速充電規格FCP(Fast Charger Protocol)にも対応していました。なお、Quick Charge 3.0対応をうたうUSB Type-Aポートは、PDを除きType-Cと同じ対応状況でした。
ケース2:cheeroのモバイルバッテリー
Power Delivery 3.0 対応 大容量 モバイルバッテリー cheero Power Plus 4 13400mAh / Type-C/最大出力 18W 超急速充電/軽量 ・ コンパクト/PSEマーク付 (Amazon.co.jp)
Type-Aポートを含めて、ケース1とまったく同じ結果となりました。こちらも5Vの場合は3Aになるはずで、18W対応の仕様を満たしません。こちらの商品はQuick Chargeへの対応はアナウンスされていませんが、実際には(Type-Cポート、Type-Aポートの両方で)利用可能です。完全に想像ですが、ケース1のモバイルバッテリーと同じ部品を使っているのでは?
ケース3:OmarsのACアダプター
PDはバージョン2.0で、5V/3A、9V/2A、14.5V/1.2Aは製品スペック通り。それ以外にも、Quick Charge 2.0/3.0、SamsungやHuaweiの独自規格にも対応しています。特に、電圧を下げて電流を増やすHuaweiのSCP(Smart Charge Protocol)に対応しているのは注目です。ちなみにType-Aポートの対応状況は以下の通りで、Appleの2.1A、Samsungの5V/2Aに対応しています。
ケース4:上海問屋のACアダプター
DN-915106 USB PD対応 2ポート急速充電器[TypeC・2.4A・最大出力42W・Power Delivery] (上海問屋)
PDはバージョン2.0で、5V/3A、9V/3A、12V/2.5A、15V/2A、20V/1.5Aを通知します。このうち、12V/2.5Aは製品スペックに含まれていません。Quick Charge 2.0/3.0、SamsungやHuaweiの独自規格にも対応。Type-Aポートの対応は以下の通り。
なお、上海問屋では、ほとんど同じ形のQuick Charge 3.0対応ACアダプターもラインナップしていますが、PD以外の対応状況は、上記のPD ACアダプターと同一でした。
おまけ:Ankerの5ポートACアダプター
Anker PowerPort 5 (40W 5ポート USB急速充電器) 【PowerIQ搭載】(ホワイト) (Amazon.co.jp)
Ankerの5ポートACアダプターはベストセラー製品で、ガジェット好きの必須アイテムといってもよいでしょう。自分が所有しているのは、ロゴが新しくなる前の旧モデルです。Type-CポートがないのでPDに対応しないのはもちろん、Quick Chargeのような電圧を上げる急速充電には非対応ですが、AppleやSamsungの独自規格で電流を増やす急速充電に対応しています。ただ、自分が所有する4台のうち、1台の1ポートだけ、急速充電に対応しないポートがありました(写真=右)。初期不良か故障か、今となっては判断がつかないのですが、通常のUSB充電はできるので、普通に使っている分には気づけないですね。
まとめ:現状はけっこういい加減
USB PD対応のモバイルバッテリーやACアダプターについて、テスターを使ってPDやそれ以外の急速充電への対応状況を調査しました。結果、PD対応としかうたっていないType-Cポートでも、想像以上にQuick Chargeなどの独自急速充電規格に対応していることがわかりました。
USB Type-Cでは、Quick Chargeなどのように、USB PD以外の方法で電圧を変動させる方法は規格違反になります。規格違反の充電方法で、USBケーブルに内蔵されたICチップ(eMarker)が破損する可能性も指摘されています。とはいえ、安全であることを前提に、複数規格に対応すること自体は便利という考え方もあるでしょう。規格への厳密な準拠をどれだけ重要視するかは利用者次第ですが、安全に使えることだけは、各社にお願いしたいところです。
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AnkerからもUSB PD対応のACアダプターが出ています。これについても検証していただけますか?
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AnkerからもUSB PD対応充電器が出ています。これも検証していただけますか?AnkerもUSB PD以外の規格に対応してしまっているのか気になります。
ケース3:OmarsのACアダプターについて、スペックにないSCPの5Aの電流が測定できたということでしょうか?同じチェッカーを使ってもHUAWEI規格は認識しないのですが、何かケーブルを変えるなどされたのでしょうか?
SCPは測定器が検出しただけで、実際に5Aの電流供給を確認できたわけではありません。使用したケーブルは普通のUSB Type-Cケーブル(USB 2.0、eMarkerなし)です。
ご回答ありがとうございます。このブログを見て半信半疑で同じ商品を買ってみたのですが、avhzyがスペック通りの規格しか示さずHUAWEIやSamsungの規格には反応しなかったので、個体差、ロットによる違いがあるのかなと思いました。(よくあることと認識してますので内容を責めるつもりでは全くありません!
ご回答ありがとうございます。
SCPに反応とのことで同じものを買ってみたのですがスペック通りの規格にしか反応しなかったので、個体差やロットによる違いがあるのかなと思いました。(そもそもスペック外のものと割り切って購入してるので内容を責めるつもりでは全くありません!