体系的に学ぶWi-Fi/3G/4G/LTE/WiMAX (Amazon.co.jp)
タイトルの通り、最近の無線通信技術を概観し体系的に説明する内容になっています。携帯電話やタブレットのようなデジタルガジェットに興味があり、かつ通信技術のことをあまり深く知らない人にとっては良い内容です。ガジェクラの皆さんにはもう知った内容かもしれません。初版が2015/1/21なので、auのキャリアアグリゲーションやau VoLTE、802.11acの1.3Gbps、LTEの700MHz帯など比較的最近の内容が記載されています(さすがにSoftBank系4社合併やWiMAX 2+の新定額プランには言及されていません)。
ちょっと気になったのは、通読すると同じ内容が複数回登場すること。切り口が違うとはいえテザリングは最初と最後に、OFDMやQAMについてはWi-Fiと携帯電話通信の章で、それぞれ2回登場しています。同じ図が2回使われているばしょもあり、全体的に冗長感があります。複数のライターで執筆を分担した可能性は理解できますが、「体系的」をうたうならば全体をもう少し整理してもよいのではと感じました。
なお、自分が読んで気になった記述を以下に列挙します。
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・「チャネルポンディング」(P78)
→「チャネルボンディング(Channel Bonding)」の誤り。索引でも「ポ」ンディングになっている。
・802.11acとiPhone 6が規格上1300Mbpsで通信できるという記述(P84-85、P29)
→iPhone 6にはアンテナが1本しかないので433Mbpsが上限。この旨追記がある場合もあるが、そもそも追記ではなく最初から433Mbpsのみを記述するのが妥当かと。P29の図では「iPhone 6が11acで1300Mbpsで通信できる」としか読めない記述になっており完全にアウト。
・3Gと3.5Gの記述混乱(P142)
→「3Gの最大速度は7.2Mbps~そのため3.5Gが導入」のような記述がありますが、7.2MbpsはHSDPAの速度で、すでに3.5Gに分類される。この論調にしたいのならば384kbps(W-CDMA)または144kbps(cdma2000)を3G速度とするべき。
・インターネットメールのプッシュ配信(P183)
→IMAPの「通知」モード(=IMAP IDLEのことと思われる)に言及されていますが、Gmail、Outlook.com、iCloud.comがすべてIMAP IDLEでプッシュを実現しているように読めてしまう。少なくともOutlook.comはExchange ActiveSyncのはず。あとこれは間違いではないのだが、ここまでいうならiOSやAndroidのプッシュ通知(APNs、GCM)に触れてもよかったかも。
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ただこの手の本は多少の記述ミスがあっても鮮度のほうがより大事だと思います。その意味で2014年末までの内容を反映しているこの本の速報性は見事だと思います。